2025.6.29 無伴奏ヴァイオリンを辿って
- keizo hibi
- 7月3日
- 読了時間: 4分
更新日:11月5日
洋館サロンで聞く無伴奏ヴァイオリンの世界
プログラム
バッハ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第1番より シチリアーナ
トーク - "無伴奏ヴァイオリン"というジャンル
ビーバー:ロザリオソナタより パッサカリア
エルンスト:「魔王」による大奇想曲
休憩
トーク - ヴァイオリン弾きの苦労自慢
エルンスト:夏の名残のバラ
ヘス:ファンタジー
トーク - イザイとは何者か、何故いつも弾くのか
イザイ:無伴奏ヴァイオリンソナタ第1番
2025.6.29(日) 英和女学院旧宣教師館
ヴァイオリン:日比恵三
---
演奏後記:無伴奏プログロムを終えて
今回はコンサートは、あまり前面に押し出してはいませんでしたが、昨年6月に開催した無伴奏ヴァイオリンリサイタルシリーズの枠組みで企画しました。
ヴォーリズ建築の木の暖かみのあるサロンで、満員のお客さんの前で、このプログラムを演奏できたことを嬉しく思います。
お茶お菓子付きの小規模サロンコンサートというのは理想の形の一つです。こちらの提案を快く引き受けてくださったオーナーの榎戸ご夫妻に感謝申し上げます。
・
さて、昨年開いた無伴奏コンサートではパガニーニアナやバッハのシャコンヌと、無伴奏ヴァイオリンの代表曲を入れるように構成しましたが、今回のコンサートでは無伴奏ヴァイオリンの起源と発展、終着点をみるというテーマの元に構成しました。
無伴奏ヴァイオリン作品の中では最古の部類に入るビーバーのパッサカリアから、到達点の一つであるイザイまで、ヴァイオリンを軸にした西洋音楽史を整理してみることで、無伴奏ヴァイオリンを一つのジャンルとして捉えようという試みです。
今回の私の懸念点としては、イザイのソナタが私の意図した働きをコンサートの中でするかどうかということでした。
イザイを最後に持ってくるというのは中々勇気がいます。普段の私のコンサートであれば後半の一番目あたりに置こうとするでしょう。私の個人的な考えで、お客さんの体力、集中力があるうちに難解な曲を弾いてしまって、後半は短く素直な曲を弾く構成を取っているためです。
今回もそうするか迷いましたが、イザイを最後に置くことで、歴史の終着点という意味合いも持たせながら、イザイの音楽性を体感してもらおうとしていました。
イザイの1番は良く弾かれる他の番号と比べ、絶対音楽的な色合いが強い曲です。
作曲のきっかけとなったシゲティに捧げられ、構成もバッハの1番に似通うなど、イザイのソナタの中で最も象徴的な曲です。これは裏を返せば直感的に分かりづらく、長大なコンテクストのある作品ということでもあります。
そもそも"ティータイム付きのサロンコンサート"で弾くのに適しているかどうかという点も含め、今回のプログラムを組むうえで一番悩んだ点でした。
曲順や選曲には悩みもありましたが、奏者目線では皆さましっかりと聞いてくださっていたように見え、嬉しく思っています。
・
今回のコンサートを経て、イザイはヴァイオリンの技術を芸術の域に持っていくためにこのソナタを書いたのだろうと改めて感じました。芸術全体の動きを見た時、マニエリスム方面に突っ走ってしまうというのはどの分野でも起こりうることで、恐らく無伴奏ヴァイオリンという極狭い範囲を見てもその気があったのではないかと思います。このように、ともすれば陳腐化とも言える流れを是正した人物というのは、その分野にとってひときわ重要で注視すべき存在でしょう。
中でもこのソナタの1番には、もう少し注意を払っても良いのではないかとも思います。今後も長く取り組んでいく曲になることでしょう。
このような"わかりづらい作品"を弾くことには、いまだに迷いもありますが、それでも舞台で演奏する価値があると感じられたのは今回の収穫でした。まだまだこのように重要な意味を持つ作品はいくつかあるので今後もじっくり取り組んでいきたいと考えています。
・
今回の無伴奏ヴァイオリンコンサートは、ビーバーからイザイまでを通してジャンルの歴史を見つめ直す試みでした。特にイザイ1番を終曲に置いたことで、難解ながらも重要な意味を持つ作品を体感してもらえたと思います。
エルスントについてはまたいつか機会があれば書かせていただきます。
今後もこうした探求を続けながら企画していきます。
壮大な意思表明のような後記になってしまいましたが、もちろん、皆様に楽しんでいただくことを第一に考えております。
次回は予告したように、もう少しカフェによったプログラムにする予定です。
今回は暑い中お越しくださり、ありがとうございました。
前日にエアコンが壊れて土日に急ピッチで直してくださったオーナーの榎戸ご夫妻にも重ねて感謝申し上げます。
それではここまでお読みいただきありがとうございました。
また次のコンサートもよろしくお願いいたします。
コメント